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金属ペーストとナノインクの違い | 技術資料

1.金属結合を形成しない金属ペースト

ナノインクの原料となる金属ナノ粒子水溶液

今、産業で実用化されている塗布型の導電材料で、最も重要なものは「銀ペースト」です。銀ペーストは、マイクロメートルサイズの銀の微粒子、バインダーと溶剤から構成されるのが一般的です。銀の粒子サイズが大きいため、粘度の低い液中では粒子が容易に沈殿します。銀微粒子の沈降を防ぐために、通常はかなり粘度の高い状態で供給されます。そのため、粘度の高い材料に適している、スクリーン印刷やディスペンサーによって塗布されます。導電機構としては、お互いに接触が得られた粒子を通って電気が流れます。粒子間の電気接続を良好なものとするため、球状の粒子ではなく、通常は平べったいフレーク状の銀微粒子が用いられます。フレーク状とすることで、各粒子間の接触が強化されるため、より有利な電気伝導パスを形成することができます。塗布後の加熱温度を200℃以下に抑える場合、銀微粒子間に金属結合はできません。銀ペーストで得られる体積抵抗率は、おおむね5×10-5 Ωcm程度であり、バルク銀に比較して抵抗率は数十倍劣ります(注)。また、銀ペーストで問題となるのが、抵抗率の経時変化です。先に述べたように、銀ペースト塗布膜では、電気は接触した粒子間を通ります。つまり、粒子間の電気接続が抵抗率を決定する大きな要因となります。銀が安定な物質であれば、いつまでも同じ抵抗率が得られるはずですが、そうは行きません。銀は大気下では酸化を受けます。酸化されると、抵抗率は当然上昇します。つまり、粒子間の抵抗率は時間経過とともに悪化していきます。これを反映して、銀ペースト塗布膜では、抵抗率の経時変化が避けられません。あらかじめ、抵抗率の悪化を織り込んで、プロセスに適用させる必要性が生じます。

(注)メーカー公表値は、この数分の1程度の値もあります。しかしながら、ユーザーの実際のプロセスではこの程度の抵抗値となると考えて概ね正しいと言えます。

2.金属結合を形成するナノインク

銀ナノ粒子の電子顕微鏡像

金属ナノインクは、数~数十ナノメートルの金属ナノ粒子が液中分散したものです。これを塗布乾燥させると、まずナノ粒子が緻密に並んだ薄膜が得られます。これを熱処理すると、ナノ粒子特有の融点降下によって(技術情報:融点降下とは?参照)、粒子同士が融着し、金属結合を形成します。その結果、ナノインクによって得られる塗布膜は、金属箔に近いものとなります。ここが、従来の銀ペーストに代表される塗布材料とは完全に異なる点です。例えば、銀ナノインク塗布膜では、最表面は酸化を受けますが、一般的な環境では内部まで酸化する事はありません。電気伝導は金属を通して行われるため、抵抗率の経時劣化はほとんど無視できるレベルです。最終的に得られる抵抗率はバルク金属の数倍、弊社銀インクでは5×10-6 Ωcm以下です。この値は、従来の銀ペーストと比較すると1/10程度です。すなわち、銀使用量が1/10ですむ上に、抵抗率の経時安定性に優れた金属膜を形成できるといえます。ナノインクは、今後最も大きな市場を形成す塗布導電材料といわれています。これには上記のような理論的な裏づけがあり、導電膜を形成させる材料としてほぼ完全な材料であるからといえます。




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