ナノインクをインクジェットで効率よく塗るには? | 技術資料
弊社のナノインクを効率よくインクジェット塗布するには、以下の3つのコツがあります。
1.インクジェットヘッド表面が撥液性であること インクジェットヘッドは大変デリケートです。わずかなインクジェットヘッド表面の汚れが、不吐(吐出できないこと)や曲がりに繋がります。ですから、インクジェットヘッド表面は常に清浄に保つ必要があります。
弊社ナノインクは、一度乾燥するとそれまで溶けていた溶媒には不溶となります。弊社のインクジェット用インクは乾燥を防ぐ仕様ではありますが、全く乾燥しないわけではありません。ヘッド表面でナノインクが乾燥すると、金属化したナノ粒子が表面の汚れとなりますから、このような汚れがつきにくいヘッドが望ましいといえます。
インクジェットヘッドには、ノズル表面にフッ素系樹脂をコーティングするなどして、水系インクでも油系インクでも表面が濡れないようにされたものがあります。弊社ナノインクをご使用になる場合は、撥液加工されているヘッドが良い結果を与えます。エプソン、キヤノン、京セラ、リコー、コニカミノルタ、東芝に該当するモデルがあります。
2.基板の表面自由エネルギーを考慮する インクジェットインクは、その吐出の制限から、ニュートン流体と呼ばれる、極めて“素直な"液性を持っています。つまり、弊社ナノインクは『液性が水と同じ』と考えてください。水はプラスチック表面では弾かれますが、アルカリなどを用いてよく洗浄したガラス表面には完全に濡れます。インクジェット塗布に関しても、この状況と酷似したことが発生します。ポリプロピレンのような表面自由エネルギーの低いプラスチック表面ではインクジェットインクが弾かれますが、親水化ガラスのような表面自由エネルギーの高い表面ではべったりと濡れてしまいます。インクジェットによる質の良い描画を得るには、基板の表面自由エネルギーのコントロールが必要不可欠です。
弊社ナノインクを用いる場合、やや濡れる方向に調整すると良い結果が得られやすいです。ナノインクを弾きやすいプラスチックフィルムを基板として用いる場合、UVオゾンやコロナ処理を行い、表面をやや親水化させる処理が有効です。
3.塗布時に、基板加熱を併用する 2)で述べた基板の表面自由エネルギー制御を行っても、インクジェットによる高品質印刷を行うことはほとんど不可能とお考え頂いて差し支えありません。弊社は『基板加熱との併用が良い結果を出すための最も近道である』と考えます。
基板を加熱しながらインクジェット塗布を行うと、着弾と同時にはじめの液滴が乾燥します。すなわち、一瞬で描画のための足がかりが得られる訳です。足がかりさえ得られれば、描画品質は一気に改善します。加熱温度は、基板の濡れやすさを考慮して変えていくのが良い結果を与えます。濡れやすい基板では70℃程度の低めの温度で、よく弾く表面ではより強い足がかりを作るために100℃以上での加熱を試す等、基板にあわせて塗布温度を変化させることをお勧めします。
基板加熱のメリットは描画の足がかり形成だけでなく、着弾時のインクの弾きや広がりを防ぎ、乾燥時間の短縮による均一な膜厚の形成に寄与します(図1、図2)。
基板加熱を行う場合、インクジェットヘッドの温度も上昇します。ヘッド温度が上昇するとインク粘度が低下するため、安定吐出が困難になります。インクの適正な粘度を保持できる、基板の加熱条件を検討していただくことが重要です。

図1 インクジェット印刷時の基板加熱による効果 (a)通常の印刷 (b)基板加熱を行う場合

図2 インクを弾きやすいフィルムへのインクジェット印刷(印刷物とその拡大図) (a)通常の印刷 インクが弾かれる。 (b)基板加熱を行って印刷した場合 インクの弾きが抑えられている。